キッチンカー子連れ出店の理想と現実

キッチンカーをはじめたい、と思った理由のひとつに「子供に働く姿を見せたい」というのがありました。
自分自身、実家が自営業で親の働く姿を見て育ったので、そういう気持ちが強いのかもしれません。
私の父は運送業を営んでいました。
軽自動車で比較的近距離の仕事が多く、印刷物、機械、食品、引っ越し、いろんなものを運んでいました。
私も子供のころからよく助手席に乗ってナビをしたり、荷物を運んだり、大学生になって免許を取ってからはドライバーとして手伝いもしていました。
早朝、おうどんの工場から打ち立ての麺を店舗に届けるのも、毎年、大晦日におせち料理を宅配するのも楽しかった思い出です。

配達についていくと「ご苦労さん」とうどん工場のおばちゃんが飲み物をくれたり、印刷工場のおじさんと「おはようございます」と挨拶を交わしたりするのは、今思えば学校の先生や同級生の親以外の大人と関わる大事な機会でした。
配達中のお昼ご飯は車内で済ませることが多くて、母がおにぎりを作ってくれることもあれば、父が「ここのパンがうまいねん」とお昼にパンを買ってくれることもありました。父の秘密を教えてもらったようで嬉しかったのを覚えています。
そして、子どもの時期にこうやって大人の社会を垣間見た経験が私の人生観に大きく影響していると思います。

もし私がキッチンカーをしていなかったら、子供たちに見えるのは家から出て行って、帰ってくる姿だけ。
仕事とは、まるで学校に行っているのと同じ、毎日行けば自動的にお給料がもらえるシステムに見えるかもしれない。
私は「それでは足りない、もっと生の働く姿を見せたい」と思ったんです。
仕事とは、人との繋がりや自分のアイデアを活かせる楽しみだ、と伝えたかったんです。

前置きが長くなりましたが、そんなこんなでキッチンカーを開業して、意気揚々と出店に子供を連れて行ったときの理想と現実。

妄想の世界では、小さい子供がお会計をして「ありがとうございます」と商品を渡す姿を思い描いていました。
でもそんな現実、この3年間1回もありませんでした(泣)

実際の現場に幼稚園児の娘を連れて行ったときのミス。
子供はいきなり接客なんてできなかった。
おうちでごっこ遊びは上手にできても、急に「いらっしゃいませ」はできないよね。
こっちもまだ慣れていなくて、狭いキッチンカーの中で調理しながら子供の相手は無理だった。
そしてキッチンカーの出店時間のほとんどは暇だってこと。
いくらママと二人とはいえ、キッチンカーからそう遠く離れられないので飽きる。
しかもママは他の出店者と話したり、お客さんの相手をしたり、準備や片付けも、手伝えることがほとんどない。
そんな感じで小さな娘と楽しく出店の夢は、私の想像力不足により、現実になりませんでした。

でも中学生の息子なら、即戦力。
普段は気の利かないタイプだと思ってたけど商品を渡してお会計、案外笑顔で会話もできる!
暇な時間は勝手に散歩にも行けるし、準備や片付けも指示すれば手伝ってくれる。
夏祭りの超忙しい現場でひたすら流れ作業のようにドリンクの準備をやってくれたこともある。

チョコパレス号を手伝ってくれてるマッキーもよく高校生の娘さんと一緒に出店してくれてるし、他のキッチンカーにもめちゃくちゃ可愛くてしっかりしてる小学生姉妹がお手伝いしてるたこ焼き屋さんとか、手伝わなくても一緒に来て遊びながら待ってるお子さんとか、色々います。
娘ももう少し大きくなればきっと一緒に楽しく仕事ができると思います。

親にも子供にもタイプがあってどんなスタイルが正解とは言えないけど、現場に子供を連れていくことで必ず子供の心に何か残る、それは確かだと思います。
その「何か」が見えてくるのは何十年も後になってからですけどね。

仕事は大変でつらいもの、お金のために我慢して働くのが大人なんてイメージは持たせたくない。
私はひとりでも多くの子供たちに「大人になるのが楽しみだ」と言って欲しいなと思います。